時計と熱燗/うめバア
あなたはそば屋で待っていて
熱燗をちびちびやりながら
私を見るなり、ほっとしたような
困ったような
薄汚れたテレビの中で笑う
若いお笑い芸人たちの姿は
遠い、遠い、都会を思わせる
寒い寒いと思ったら
雪がちらついて来ちゃったね
駅は人がいっぱいだね
私は何をするわけでもなく
あなたの煙草の
けむりの行方を見ている
好きも嫌いも言えないし
喋りだしたらなにもかも
くだらない言い訳になりそうだから
とぼけたふりして、
時計と、あなたの手首を
かわりばんこに見ている
電車がなくなったら困るから
もう、帰らなくちゃね
そう、そろそろね
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