黄緑羽/砂木
 
を熟した赤にしようと
林檎を見守る同じ畑で

仲間もいない 暖かさもない
たった一度 手に入れた歌の虚しさに
気づきもせずに 
羽を持ち声を授かった喜びを
力の限り望む蝉

やがて 鳴声も途絶え
陽射しの暖めた一瞬に歌は散り

たくさんの暖かさに冷たさに
実が成熟するように
そっと 裏を返しながら

葉に隠れたままの
鮮やかな黄緑に
季節を問う








戻る   Point(8)