黄緑羽/砂木
 
十月の林檎畑は小春日和
はしごの上に立って
林檎の葉をとり
少し位置をずらして
枝の下の黄緑の部分も
赤く色づくように作業する
手間をかけただけ
儲かるものでもないけれど
まんべんなく陽をあてて
おいしそうな赤にするのだ

と その時 蝉が鳴いた
昼すぎの二時頃
うぶ声のように蝉が鳴いた

十月十八日
陽射しは続かない
夏の生き者の住む場所ではない

殻を破り
透明な羽をひろげて
鳴き歌う喜びの歌は
そのまま 死の歌

たからかに響けば響くほど
あなたを受け入れない今が
よそ者のよその歌を黙殺する

葉をおとし 枝からずらし
一年の収穫を熟
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