待つということ/小川 葉
 
 
待ってる
ということは
生きてる
ということだから
待ってくれなかった
そのひとは
死んでしまったのかもしれない

遠くから
改札口を見つめるそのひとは
待ってる
というよりも
待つことのできない
たったひとつの世界から
なすすべなく
見つめることしか
ゆるされないのかもしれなかった

今朝はやくとどいた
その郵便物を
ぼくは待っていたわけではない

開けたわけでも
閉めたわけでもない
窓の外に景色だけがつづいてる
列車に乗りながら
なすすべなく
待ってくれなかったひとが
ぼくを待つその駅まで
旅はつづいてる
 
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