一輪花/江奈
 


ぷかぷか煙草を吹かしながら、不確かなまあるい円を描いている。
身体は凍えるように寒いせいか、脚は根が生えたのではないかと思うくらい動かない。
まあるい円の中には宇宙の終わりとぼんやりとした神様の存在とただただ恐怖が追いかけっこをしている。
頭が良い方ではないのでただその繰り返しだし、球体になるほど膨らむわけでもない。
ぷかり、ぷかりと視界が真っ白く染まる。
もしまあるい円が球体になる事があればわたしの脚も溶けて春が来るのかもしれない。
そしたらあの人が摘んで持ち帰り、暖かく一輪挿しにでも挿してくれるかもしれない。
わたしは花として一生を終わらせなくても済むのかもしれない。
なんて考えていたら夜になり、身体は余計に冷えてまた一人になった。
あの人がわたしの元に来たらまあるい円の話をしようと思うの。
きっと優しく撫でてくれるだろうから。
夜は水が冷たくて脚が冷えて仕方ないけど。

見ている満月は赤く笑っているようだった。
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