夜を噛む/
小川 葉
満月が
おおきくくちを開けて
新月になる
夜空をひとつ
噛み終えるまで
いくつもの時を食べつくし
それでもなお
夜はおとずれる
無数の星は彼らの目だ
今日もどこかで
産まれては死に絶える
星は僕らの命と同じ数だけ瞬く
咀嚼して流し込む
このからだには
命のかぎり夜がある
僕らは夜を
わたしと呼び
ときにあなたとさえ呼ぶ
三日月のくちで微笑みながら
生きることのかなしさと
おかしさを噛み締めて
それでもなおおとずれる
朝を信じている
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