心に新芽が/百瀬朝子
 
傷ついたあたしを
これ以上癒さないで欲しいのに
つないだ手と手を切り離せないのはなぜ

あたしはあたしの意思でもって
癒されることを望んでいるというのか
あるいは
新たに芽生えたこの感情を
育てていこうとしているのだろうか

新芽を雑草のごとく
むしることができれば解放されるはずなのに
今のあたしはそんな簡単なことさえできない人喰いだった

ぬるま湯に溺れていく
浸った足首は気持ちがいいけれども
頭まで浸かれば息ができず苦しいだけ

沈むだけ沈んで
底にたどり着く前に泡となる
泡となり上昇
息を継いだら空が見えた

心の新芽はしっかりと
根をはり茎を伸ばし葉をつけて
陽の光を待っていた
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