一億年前の休日/小川 葉
 
 
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった

ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたように
自然のなかにとけこんでる
僕は木の実を拾うように
それを背中にのせておんぶした

木の実は目をこすりながら
背中でちいさく寝言を言った
夢を見てるのだろう
一億年前の休日も
今日みたいに
あの森のむこうに
日が沈んだのだろう

さかなが静かに跳ねている
鳥が家に帰ってゆく
僕らも帰るべきところへ
帰ってゆく
一億年も変わりなく
そうしてきたように
 

戻る   Point(20)