一億年前の休日/小川 葉
釣りは飽きてしまったようだ
さかながいないからしかたがない
父さんだけが夢中になって
往生際がわるかった
ふりむけば
木のベンチで息子がねむってる
一億年前から
そうしていたように
自然のなかにとけこんでる
僕は木の実を拾うように
それを背中にのせておんぶした
木の実は目をこすりながら
背中でちいさく寝言を言った
夢を見てるのだろう
一億年前の休日も
今日みたいに
あの森のむこうに
日が沈んだのだろう
さかなが静かに跳ねている
鳥が家に帰ってゆく
僕らも帰るべきところへ
帰ってゆく
一億年も変わりなく
そうしてきたように
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