貝をひらく /服部 剛
 
皆が笑顔で集う 
不思議な海の中心で
貝のこころを開いて
歓びを分け合うのも自分 
ふいに人と話せなくなり 
深海の暗闇で 
貝のこころを固く閉じ 
独りきりになっているのも自分 
どちらも自分の姿であるならば 
もう一度 
閉じた貝の内側に立つ燭台に 
一つの静かな炎を、 
わたしは灯そう   
休息の眠りから覚めた地上で 
わたしのこころの貝を  
ゆっくり開く 
もう一度、 
何度でも、 
素晴らしい自分
と 
駄目な自分 
の間に立っている 
「 目には見えない壁 」を 
突き破って 
歩けるように 
こころの貝を、ゆっくり開く 
じっと地面を睨みつけ 
たった一つの拳を握り 
独りの地平に、立ち上がる。 
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