空を切る/伊月りさ
わたしもそろそろ羽ばたくのをやめて ただ
旋回をして
急降下して
微笑みはじめた電灯の行列を
この爪で殺して
静謐な海鳴りを一喝して
砂粒の高度まで
上がっていきたい、
遠い、きみと、ひとりずつの
血肉を交換したくて 千切れた
言葉を交わした そこから
干涸びている
置き去られる
まえに
その海を吸い尽くしてしまえば わたしの
剥製は潤う、きっと
太陽に近い冷気のなかで
振り返って、
またたいて、
唾を飛ばして、
浸みこんだ、
下品な年月を追放する
羽を得る
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