家/小川 葉
きのうの夜
妻とけんかしたのだ
きっと疲れていた
今日は帰りたくなかった
だから僕は家の前を通りすぎていった
同じ色の
とても小さな家が
線路沿いにつづいてる
青でもなく緑でもない外壁は
身寄りのない老人の暮らしの色として
言葉なく告げているかのようだ
踏切のところで
色は途切れていて
そこから向こうに建ちならぶ
同じ色のマンションの
同じ間取りの中で暮らしてる
家族がそこあるはずだけど
厚い壁のせいか
声が聞こえないので
外から見るそれらは
すべて同じように見えた
のどがかわいたので
ジャスコでミネラルウォーターを買う
同じような棚
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