鱗狩り/水島芳野
「あなたは強い
と
あなたは言った
しなやかなその腕が私を抱き上げることを待ち望み
狂おしい望郷の思いにまた抉り取られていく
愛しさが込み上げても振り返ってはいけないのだ
あなたは決断してしまった
覚悟している
あなたが私を信頼した刹那より
私はあなたのために存在することを始めた
白いあぶくがまだあなたの生きている証だという
人魚はその鱗を捨て人の足を得た
ならば僕らも決めなくてはいけない
雷鳴
雲のうねり
もう二度と振り向かせない。
どうせすべて信じてなどいないのだ。
けれど僕は覚悟した
あなたが鱗を捨てるその瞬間を
僕は絶望のような幸福のような思いで待ち望んでいる
今、運命を引きはがしにいこうと思う。
」
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