嫁いで思うこと/小原あき
 
に話すことが
バラバラになり始めている
バラバラになった言葉は
家のそこいらに落ちていて
掃除しながら集めると
やっとわたしになる
お祖母ちゃんと話をすることはない
介護施設に入る前に
一緒に暮らした数ヶ月の間も
ただ、目をそちらに向けて
零したご飯を
拾うことしかできなかった
それを口に戻して良いものか
迷いながら。




犬が零しても
赤ん坊が零しても
そんな気持ちにならないのに
合わない入れ歯が
かぽかぽ鳴る口から
食べ物が零れると
ああ、と思ってしまう
悲しいのでもなく
虚しいのでもなく
淋しいのでもなく
ただ
開けっ放しの口を
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