子供ではないのだから/鈴木
で、無機物を愛すのにためらいを感じる人種の生島先輩は遊戯に熱中できなかったみたいだ。射精産業はセックスではない。さて件の女は白から小麦へ色がプリズムみたいに変化する肌とキャミソールを不器用に動かしてサンダルを履く。ノブに右手を掛け振り返り忘れないでねと言う。そして微笑む。顔がない。緑して。扉が。
アビヤント。アビヤント。それから?
青空の下。お祭り中の神社へ石階段を上ると、鳥居の下に女がいる。赤い生地に梅の花を散りばめた振袖、帯は紫の抽象文様、両のまなじりから紅が二本、唇の端まで走り、白粉を施した頬と対照的に光を放つ。椎名。生島先輩は声をかけようとして、やめる。乾いた轟音が耳を突く。射的に
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