黙思/舞狐
 
目の前にある林檎
赤く赤く鮮やかに


もしも
私に見える林檎の赤が

他の人には
私が見ている葡萄の色として見えていたとしたら

私は他の人が見えている葡萄の色を赤だと思っていて



一羽のカラスを見つけた
黒く艶のある鳥

しかし
私に見える鳥の黒が

他の人には
私が見ている雪の色として見えていたら

私は他の人が見ている雪の色を
黒だと思っていたりして


それでは
私は

この目に映る
何を信じればいいのかと
途方にくれる


また今日も
行き過ぎる人の影を
飛ぶ鳥を
夕焼けを

何も感じないよう
眺めよう

流れる時間だけを感じながら

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