フィーバー/セガール、ご飯ですよ
俺は本当は詩人になりたかった
そしてタレントとして活動したかった
けれどもそういう人になる方法を俺は知らなかったし
だいたいそんなの最初から無理だとわかっていた
だから十年間 毎日猥褻な映像ばかりを観て過ごした
十年間 それ以外の仕事は何んもせずに
俺は自分の墓ひとつ掘れない落伍者と成り果てた
両親は絶望して頭脳が変な風になってしまった
妹は迫害されて就職や結婚が駄目になった
飼い猫は習志野ナンバーのパジェロに轢き殺され
自宅は増水した河川に流され跡形もなくなった
俺の夢をぐうの音も出ないほど徹底的に否定した旧友が
俺の知らない間に詩人になっていて
今度タレント活動を始めるというニュースを聞いた
この世に神はいないのかと涙ながらに虚空を見上げたら
ぼやぼやと神の顔面が浮かび上がって一言「いないよ」と言った
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