彼岸花/湖月
とおく とおく
はなれた街にいる 膝を抱えた少女を迎えに行かねば
夢の中の少女は夕日の沈む部屋にいるだろう
そこでただ独り 膝を抱えているだろう
窓は少しだけ開かれているかもしれない
古びた本を持っているが彼女が開くのはまだ先だ
その代わりに真っ白な 何も書かれていない本を読むだろう
少女は白いページの中にひとつひとつ 心に住むものの名前を写す
少女の中には何人もの膝を抱えた子供がいるのかもしれない
少女はわたしの隣で
日の暮れる道の紅い花を摘むだろう
この季節のうつくしいものは 赤をどこかに持っている
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