門沢橋6丁目通り/tomtom_poem
準工業地域を抜け
畦道を抜けると
大きな門構えに
由緒ある大ケヤキ
視線のかたすみに
逃げる影
それに引かれて
すこし歩いてふり向く
ふり仰ぐ
好々爺の大ケヤキ
椋鳥たちは空の上
無為に飛んでいる
畑には実
柿の木にも実
道ばたにさりげなく花
影が光に
すーっと動いていく
白い花が数人
頭を擡げている
橙色の花が群れをなし
迎えてくれる
くさむらの中に
紫の花の群舞
もっと小さな朱色たちは
ささやかに笑みかわす
椋鳥たちは電線にとまり
だまって口ずさむ
路地から青い子が
背中を見せたり
消えていったり
すすっと歩く
すすっとあったまる
ふと
近代文明の大河にぶつかる
よろめく
そして――ふり返る
電柱の住居表示・門沢橋6丁目
老婆が背中を曲げて歩いてゆく
遠く近づけぬ位置で
幹をあたためて
卵を孵そう
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