解凍パニック/小川 葉
恋文を書いたつもりでした
まったく何年ぶりなのでしょう
こんな気持ちは
なんども破り捨てようと思いましたが
結局そうすることもできずに
他の誰にもわからないように書きました
あなた以外というよりは
わたし以外に誰にもわからないように書きました
やがてそのような気持ちは
詩となりわたしのそばに寄り添っていました
わたしのなかの冷凍庫には
それらのひそやかな気持ちが長期保存されていて
いきなり解凍したら
きっとパニックしてしまうので
人生というものはゆっくりととけながら
ここにあるひとつだけのからだが
わたしのからだであったかのように
いつか水にかえってゆくのです
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