<SUN KILL MOON>/ブライアン
 
 夜明け、静かな街に若い男性の笑う声が響く。ビルとビルの間を反響しながら明るくなった空へ放たれる。カラスの漆黒の鳴き声。かすかな雀の声。ゴミ収集車のエンジン音と世間話。夜勤明けだった。体は疲れていただろうか。だるさは感じられなかった。
 雲に覆われた横浜の街で、快晴だった当時の渋谷の街を思い出そうとしているのはなぜだろう。
 当時、コールドプレイの「静寂の世界」をよく聴いていたように思える。もしかしたら違ったかもしれない。ただ、「静寂」という言葉に強くひきつけられていた時代だっただけなのかもしれない。イデオロギーとしてだけの醜悪な「静寂」。けれど当時の朝の渋谷には、イデオロギーとしての「静寂」
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