動物園にて/いっと
 
檻ごしの瞳の圧倒的な力を知らない娘は
不遇な出会いを恨めず
ただ無邪気にはしゃぐしかない
不憫な娘に、私は
一体何を伝えられるか

空間が違えただけで
私たちは安全に包まれる
遠く離れた灼熱の大地を思う
果てしない平原を思う
そこに住むモノたちの幸福を思う
ここに繋がれるモノたちの不幸を思う

娘が檻に近づいていく
動物がそれを見て、こちらに近寄ってきた
この奇跡に等しい邂逅を
誰も語れない

動物たちに檻を壊させてはならない
檻を壊すのは娘
檻を壊すのは娘
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