指先/
小川 葉
指先から入る
表面張力の
弾力にはじかれて
はじかれるうちに音もなく
入ってゆく
指の骨の
白い洞窟のすきまから
声が降る
あの声もその声も
白く堆積する
カルシウムが育ち
軋む音をさせて朽ちてゆく
その中に
入った時と
同じように
そこから出ると
指先から聞き覚えのある
いきものの声が
聞こえてる
あなたは存在しなかった
わたしのように
役にたたない
宇宙とおなじ数だけある
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生まれるまでめくり続ける
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