河のほとりの白い家/佐々宝砂
 
沸騰する赤い酒はきみの血で
かさかさに硬いパンはぼくの肉
どこもかしこも乾いていた
この世界も ぼくも もう ずっと前から

玄関には裸体の男をかたどったブロンズ像があった
防人のように居丈高に侵入者を睨みつけ
そのくせ小さな男根の先っぽは皮に包まれていた
どうして彫刻はいつも包茎なんだろうと
きみは指まで指してわらった

それからぼくはきみを

夏でも日焼けしないきみののどは白かった
確かな徴としてあるきみの小さなりんごが
何かの拍子にこくりと動くとき
疼いたのはぼくの何だったか
悪魔にだって答えることはできない

湿り気を帯びた黒い風が
地下から吹き上げ
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