9時前のトースト/crowd
これが最後の挨拶だ
もうここに戻ることはない
旅立つ準備はできた
喉の裏を空気が入り込む
感情が絡み合い
脳内で火花を散らす
まだ悩みがあるようだ
9時前にはおいしい
トーストを食べよう
おいしい嘘を付こう
逃亡は目に見えた選択
充分じゃないのさ
山間から淡いオレンジの
光が差し込み
体内の何%かを満たす
あなたはいい人ではなかったが
無垢な心と赤い髪を持っていた
もう景色に映える
瞬間を見ることはない
北上へと急ぐ渡り鳥に鏡を渡す
捨てて 捨てて 捨てて
この地を出よう
見るに耐えない残像が
裏の山に放置されている
忘れないでいい
そのままの感覚で
始めよう
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