雷魚の世界 ⑥/crowd
 
焦げ臭い匂いだけが

この地に残した功績だ

灰は海に流され

やさしい言葉の一つも

言わなかったし

知らなかった

三日後には跡形もなく

車体も車輪も匂いも

消えていた


造られた顔が通り

山を裂き道を舗装し

街と街をつなぐためのもの

便利な快適なものを造った

団地はいくつもでき

真ん中には

ブロンズのヴィーナスのオブジェが

置かれていた



多分そういうことだ
         
(完)


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