雷魚の世界 ⑤/crowd
 
三年半思い詰めた彼女は

涙も出ない顔で幻覚をさまよう

暗がりの中映し出されたライトは

彼女が走るレールを照らす

レールは幾多にも枝分かれし


影が

「デュス デュス デュス デュス.....」

音を鳴らす

憤りにも似たそれに彼女は焦る

一足毎に速度を上げ

幾多にも幾多にも分かれた

レールを通過する

空虚感から恐怖感から蟻走感

脱力感から既視感から焦燥感

思いは脳に転移し

視界はグチャグチャになる

青光りしていた車輪は

火花を噴いて 悲鳴を上げ

ガタガタになって 取れた

レールに擦り付けられた車体は

火花から炎に形を変え

煌々と燃えなさった


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