酒八分の記憶/純太
 
月下のお好み焼き屋は油凪
鉄板の上で焼かれているのは
ナポリ天と悲恋だ

梅ソーダサワーの上昇する泡を
見つめながら・・・

思えば酒豪になるべく
和洋折衷受け入れること蝶のごとし
夜の帳が降りる度に
肝臓を鍛練した日々が懐かしい
恋人やら友達やら
皆、酒豪を成就した

俺はやはりある月下
足洗川のほとりで夜ごとゴジラになることに
心底に困憊し
瞳から流れた挫折を舐め飲んだ

それからの俺は
酒を中途半端に飲む男ゆえ
過去の悲恋に合う酒もみつからない
過去の良き思い出に合う酒もみつからない
生きてきた時々はすべて混合の実なのに
酒というアプリケーションを使っても
噛み合わぬスライドショーばかり

それでもまた近況に
酒を舌に沈ませ身体に舞わす
そして記憶にこんにちは
淋しや 嬉しや  悲しや
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