3/カフカ
 
でも手を離さないので何十回も殴った
殴っているうちに吐き気がしてきた
運転手の顔を見ると、口から血を流しながら不気味な笑みを浮かべいた
「お客さん〜、まだ運転は終わってませんよ」
青い雷が向かいのビルにゴロゴロと音を立てて落ちた
ビルの中で働いている人々はきっと自分達が働いているビルに雷が落ちたとは思っていないのだろう
ぼくはもう一度運転手の顎を狙っておもいっきり殴った
血で汚れた左手をハンカチで拭きながらタクシーを降りた
思っていたよりも雨は降っていた
傘を忘れてしまった、でももうタクシーには乗らないだろうし傘も買わないだろう
久しぶりに煙草を吸いたいと思ってポケットに手を突っ込んだ、だが煙草はなかった
そして、ふと禁煙をしていたことを思い出した
ぼくはズボンのポケットからレモンドロップを出して口に入れた
雨は止みそうにない
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