紐と輪/あすくれかおす
ひそやかに草を食む
動物のそばを歩く
季節は夕方にちなんで
風が瞼に
暗やみをしまう
欲しかったものは
ひとつになる
もつれた言葉をほどく紐
ぜんぶじゃなくなる
いま
静かな気持ち
かき分けた包装紙を
集めてお葬式をする気持ち
土星と同じくらいの輪っかを
お腹のなかに
みんなが持っているという
うっかりそれを
浮かべてしまうと
涙か天使になってしまう
渡し舟が命を閉じていく
川べりを苗床にして
繁茂する船員達を
ずっと未来のほうまで運ぶ
明かりを見つめる
括りつけていた自分の輪っかは
由もなく泳いでいる
小さな部屋の片頬に
右手右足を凭れて眠る
それから早起きをして
輪っかを見つけて伸びをして
お辞儀をしてから靴を履き
一日分のはじまりを探す
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