爆裂(上、前)/鈴木
 
 大学へ入って初めての帰省だった。吹き降ろしてきた風が祥平を迎えた。両端に住宅の並ぶこの坂の頂上へ向かう彼は、郷愁のなかば強制的であることにおかしみを感じていた。吼え声すさまじかった番犬の家に差し掛かれば覗き込み、頭と体の区別がつかない斑猫がいた塀を目に留めれば振り仰ぐ。「双子の木」と愛でていた梅の花弁を薄雲に漉された日光がくすぐっている――姉は斬られていた。
 それから三度目の十字路で視界の左手が開けた。暴雨時には貯水池、震災時には避難場所となる中央公園では子らが走り回り、奥に祥平の通った高等学校がそびえる。ジャージ姿の女子が走ってきた。公園と学校を分かつ歩道の幅が狭いため、二つの外周を合わせ
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