夏の弔い/亜樹
夏というのは、その極彩色の明るさとは裏腹に、死の季節だ。
そのまぶしい日の光と対照的に、くっきりと落ちる影のように、その陰惨な気配は、始終里を覆っている。
年寄りの多い田舎では、夏になると葬式が急増する。連日の熱帯夜が、老人たちの最後の体力を、容赦なく奪うのである。
どんなに暑い日も、彼らは冷房をつけない。ただ日陰日陰へと逃げ、そうして追いつかれる。死の気配に。
寂しい老人は、友人を呼ぶ。最初の一人が死んだなら、それを皮切りに訃報がひと夏続くのだ。
はためく鯨幕と、黒い人の群れ、火葬場まで続く車の列は、風物詩といっても良いくらい、青々と稲が育つ田の脇に馴染んだ風景となる。
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