手/yo-yo
父のポケットに
ときどき手を入れてみたくなる
そんな子どもだった
なにもないのに
なにかを探してしまう
いくら背伸びしても届かない
指の先がやっと届きそうになって
そこには父はいなかった
はじめて父のタンスを開けた
肩が丸くなった背広の
胸のポケットから
枯れたもみじの葉っぱが出てきた
いつか置きわすれた
小さな手のように
なにかを
掴もうとする手が
ふと父の手になっている
手は
落ち葉をひろい
風におよぎ
草の手になって
秋の
ポケットをさがしている
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