夢から醒めて/智哉
見慣れた間取り、見慣れた家具、染み付いた薫り
その景色の中に溶け込み一寸の違和感もない
まるでずっとそこに居たかのように
きみは微笑いながら名前を呼んでいた
僕も何度呼び違えただろうその名を
何度も何度も愛しみながら呼んでいた
君のポケットから出てきたら古びた指輪は
あたかもずっとそこにあったかのように馴染み
その感触は今も消えていない
僕は目醒め、隣に眠るその人を
もう一度、愛しい名で呼ぼうとし
名前を飲み込んだ
意識を取り戻し、現実に引き戻し、息を深く吸った
指輪の感触は今も消えない
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