Born To WIn [カラスパナ]/プテラノドン
 
今度は、
ゴムの使い方を知らないガキに教えるみたいに
スパナをじっくりとそいつに見せた。
それから僕はサイドミラーを叩き折り
スパナを川に放り投げた。
「取って来いよ!」

ジョーイは、
渋滞していた車の列から
耳障りなクラクションを鳴らしていた
そいつを黙らせるために
車に戻って紙袋を掴んだ。
その時まで
ジョーイも、僕も気づかなかった。
紙袋を突き破って、夜空に向かって飛び立ち
姿が見えなくなったその時ですら、
カラスが息を吹き返していたなんてことに。

そしてちょうど今ごろ、
時間どおりに駅に降り立つ友人の姿があるならば
僕らを待つその頭上で、
「ケ・キエレス?ケ・キエレス?」と
問いかけてくる鳥の声があるだろう。もしくは、
生まれたばかりの赤ん坊が、自らの手を
頑なに握りしめるように、そいつは、
スパナを掴んでいるに違いない。
だけど、君ならそれをとることができるんだよ。
手を伸ばすことさ。
ほら、ね。

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