野と月(夜と獣)/木立 悟
 





空の火と唱斬る光ひらめいて水銀の音ひもとくもののふ



糸車投げ与えられる糸車ひとりの冬に燃されゆく夏



亡霊に起こされ散らばる骨を視る未明の標ゆらめく標



鞘(さや)もなく降る雨のなか投げ出され或る日誰かに拾われし剣



ひと文字に断たれて生まれくりかえしまたひと文字に断たれる鴉



窓の核窓の芯からほぐれる火今日を彼方へ敷きつめる野火



夜が夜星が星へと狭められ空はひとつの手のひらを巡(ゆ)く



三十と三十一の違いよや今も響きゆく二四六九(にしむく)十一(さむらい)



太陽を齧る月から迷い出て干りつく如き星の艶花(あだばな)



野に光る欠けた刃を埋めるのは夜の虎から降りそそぐ闇
















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