幼年/渦巻二三五
 
樹皮から生まれた
雨の夜に生まれ
落ちた
気がつけば土のなかにいて
根の森のなか
迷わず
根の細い方へ向かった
沈んでいった
――海も陸も底は暗い

まどろみながら
土と根とにひたすらに養われた
いのち絶えて土に吸われ消えていったものもあったが
消えていったものがいるということも知らず
歳月というものも知らず
根の森のなか
脱ぎ捨てたいくつものからだ
わすれつづけ
生きることにのめりこむ
――海のものもそうしたもの

それでも脱ぐ度に
細い根を太い方へたどり
もどってきていた
知らず知らず
――つまりは「居心地」による

ある日、思い出す

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