「何故人を殺してはならないの?」−「存在の彼方へ」を読んでみる5/もぐもぐ
 
うが、心地よかろうが苛立たしかろうが、放棄することの出来ない関心事。そしてそれを「近さ」というかなり奇妙な語で呼んでいる(何故この語を用いているかはとりあえず措いておく)。

例えば、使い終わった道具、それは「役に立たない」ものではあるが、何かしら「捨て難い」、一種の愛着のようなものを感じてしまう。或いは住んでいる場所。ただ住むだけなら引っ越してしまえばその場所にはもはや何の用もないわけだが、何故か「私は以前ここに住んでいた」という懐かしみや、或いは好悪の情を感じてしまう。或いは同じ機能を持った複数の道具。どれか一つだけあれば他は要らないようにも思うが、それでもなぜかしら残しておいてしまう。た
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