「何故人を殺してはならないの?」−「存在の彼方へ」を読んでみる5/もぐもぐ
なければならない、そうした謎めいた矛盾的なあり方が、「責任」である。
そしてこれは、現実の戦いや利害の観点からは無視されてしまうような、その基準では測ることができないような種類の責任なのだった。またこの「責任を回避することの不可能性(は)・・・責任の忌避に先立つ逡巡、あるいは逆に、責任を忌避したあとで生じる悔恨のうちにしか反映されない」(p30)。躊躇いや後悔だけが、この「責任」を遵守することを要求する唯一の保証である。
「現実の現実性はこのような逡巡には目もくれない」(p30)とあるように、この「責任」は、「現実」からは無視されてしまうところのものである。戦いや利害で動いていく「弱肉
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