虫/yo-yo
 
妹が泣いていた
だいじなオルゴールの中に
嫌いな虫が隠れているという

ふたを開けると
ときどき
キロロンと虫が鳴く

きれいな音のでる
オルゴールの不思議なピンを
折ってしまったのはぼくなのだ
妹はそれを知らない

いっぱい
だいじなものを壊した
父の万年筆とカメラ
母のネックレスと手鏡
おじの釣竿とバイク

好きなものが
壊れるように
父は眠り
おじは消えた
母は歩行器がないと歩けない
この秋
母親になって妹は
はじめて
虫の声を聞いている






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