ふゆの日/ さくら
 
冬の継ぎ目を 
誰にも気づかれないように 
走りさったあの日 
あの日は毎年やってくる 
それは 玄関の扉を開くと同時に 
背中に 過去を想い出す懐かしい匂いと 
肩に もどかしい寒さに気を使う風が 
わたしを冬へといざなう 
あの日 
眺めた空と水面に映った空は 
秘めたあおを深め
遥か遠くにつなげている 
その中で生命の光を見たような気がした 
空をおよぐ魚には翼があり 
お湯を浴びて潤ったわたしは 
肌寒さから解放され人魚になる 
それでいい 
それでいい 
あの日 継ぎ目の神秘に生まれた記憶
風に触れて  
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