愛読者、書/きりえしふみ
 

 二人のハート
 を 重ね合わせた
 二人のハート
 の 片割れに自分の 換えの利かない
 片割れのハートを 結んで寄越した
 触れられないものを

 『言葉を尽くして!』
 でしか 認識出来ない
 読み返すこと
 でしか 味わえない
 そんな小説の中の恋を 僕らは
 互い、に

 仮面越しに僕らは 恋した
 互いの仮面の中で 互いの名を呼んでみても
 自分の声、しか
 自分の熱だけ、しか
 『返ってこない!』
 という 怖れの中で ただ
 『好き!』と

 嘆きと 不信の最中にあって
 それでも僕ら
 芽吹いた想い 小さな恋を
 花、開かせ
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