君に好きと告げるのにあたしは文字しか/きりえしふみ
 
処”から 浮き出て
 口付け一つ……送ること
 君の怖いもの から 君の震える背中を
 さすることも
 身を呈して 君のこと
 守ることさえ 叶わないのに

 たった一つきりの行動に 適わぬ重み……あたし
 数千行の詩歌が
 ぽつん ぽつんと 白い紙面で

 (まるで 離島)

 点在しながら 君に送る 『好き』
 君へ向かって 歩き出しては 辿り着けずに
 足踏みしている 一冊の本の中
 それ……あたし 散らばる文字
 点在する……一丸になり得ぬ 白い紙の孤児
 それがあたし

 あたしは
 人になりたい 人魚のような心持ちで
 白い波間で きらっきらっと
 微笑み返す一文の文字
 アポロの君の 優しい瞳に照らされて

 (後どれだけ?)

 きらっきらっと輝いたら
 気持ちを縦に走らせたら 並べてみた なら
 君の心に辿り着ける?
 口付け一つ 眼差し一つも 送れない
 この場所で

  ……君に会える?……君はいますか?

 (c) shifumi kirye 2008/09/29

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