君に好きと告げるのにあたしは文字しか/きりえしふみ
君に好きと告げるのに あたしは言葉しか持ち得なかった
柔らかい口付けもない 抱擁も出来ない
体を持たない 文字である あたしには
素足でタタタッと 駆け抜ける 白い紙上を
“此処”から 逃れられない 一歩たりとも
“そちら側”に行けない!
って 知り得ていて あたし
(怖いものなど もう ないの?)
丸まってみた 無防備に 散らばってみた
白い紙切れの上 血を通わせてみたい!
と 挑んだ
縺れた言葉を解こうと 躍起になった
文字に呼吸と鼓動を移植しよう! と
“此処”から 浮き出て
君の指先 触れたりできない のに
“此処”
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