秋桜飛行場/雨傘
を建て、新しい生活をする気力の蓄えが枯れていたからだ。
そうして、わたしたち家族はこの場所(わたしの生まれた家)に住み始めた。
近所の人は次々に立ち退いていき、並んでいた家は日を追うごとに取り壊されていった。
とうとう、我が家が更地の一軒家になったとき、
砂埃の舞う殺風景なこの土地を、秋桜畑にしようと思いついた。
花が咲いたらこの場所を去ろう、と。
早速、わたしは夫と子供達に種を蒔くことを提案した。
上の子は目が輝かせながら、「お花畑が飛行機から見えるようにしようよ」と言った。
わたしは娘の提案があんまり可愛いので、抱き寄せて頭を撫でた。
―もちろん飛行場ができるときには、花畑もつぶされてしまうんだけどー
正面に座った夫は、決意したようにゆっくり頷いた。
わたしは洗濯籠を抱え、空を仰いだ。
よく晴れている。
このシーツが乾いたら、わたしたちはここから出発する。
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