死にたがる人への書簡/いっと
「生きるには辛すぎる」と語るすべての人が流す涙の味を
私は理解する術を持たないが
しかし私はただ一つの言葉を、確信を持って言う
(あなたに死んでほしくない
あなたは絶望を心の内に溜めこんで
それを消化することが出来ない
(苦しみは共有を拒むので
私とあなたが溶け合うことは永久に叶わないが
しかし私は少しでもあなたを知りたいと願う
願いは言葉である
言葉を用いてでしかあなたに接することが出来ない
「生きるには辛すぎる」と騙るすべての人が発する言葉の意味を
私は理解したくもない
ただほとばしる感情を束ねて言う
(あなたによって不幸にも並べられた言葉達の、数奇な運命を悼め
言葉は生まれながらにして力を持つ
その力は時に人を殺し、時に人を生かす
ゆえにより真摯に、取り扱わなければならない
あなたの苦しみは確かに存在しよう
しかしそれが真実だとは限らない
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