(酒場)/まんぼう
大橋川近くの酒場で
降る雪を
窓越しに見ていた
街灯の灯りの向こうを
大きな海亀の甲羅が流れていった
哄笑と囁き
古いジャズのスイング
青いソフトに降る雪は・・・
触れ合うコップの音が時間を刻む
寄木細工のカウンターが
鉛ガラスのコップの光を吸い取ってゆく
さまざまな身振りで
さりげなく
手渡された番号札は
硬く折りたたまれ
そ知らぬふりで
握り締められた
確実で無意味な
時の経過が告げられ
かすかな目配せ、指先の触合い
人々は厚い外套を着込むと
割り振られた熱気球に乗り込み
青い水蒸気の様に
旅立ってゆく
私は窓際にすわり見つめ続けた
そうして、友よ
飛び去ってゆく者達は
置手紙さえ残しはしなかった
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