いつか最後の現代詩が/小池房枝
まず本
本が絶滅する
たとえば資源の枯渇、高騰
工場で印刷される書籍はなくなり
図書館やブックオフはレンジャーによって守られていて
古書街は聖地と化している
それからネット
インターネットウェブ
ケータイツィッターその他
電波使用量が配給制になるとか
強力なプラスチック喰い細菌が現れるとかして
祈りの小函が瓦解する
よかれあしかれマスコミは
とっくに別のものに成り果てていて
ほいほいと詩人を名乗るひとも場所もなくなり
書いたものを即日衆目にさらすことは
誰にもできなくなり
それからひとは
我にかえって
ひとりひとりただの自分に戻って
それでも書くひとたちは書くだろう
言の葉を紡ぎ出さずにはいられないひとは
何かの裏や
手元のノート
本当にパーソナルなものになってしまったパソコンに向かって
まだ書類のようなものがあるならば仕事の途中、片隅に
手放したら二度と自分の手には戻らない何かを
手放すあてもないまま
そういうのが
最後の現代詩になるだろう
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