夏から混沌/ふもと 鈴
 
てくてく歩くうち心のひだも落ち着いている

高層のビルの角から飛び立った鳥の行方を追った夕暮れ

夕暮れと繰り返し言うバカ二人そんなに好きなら持っていきなと

すぐにでも未来はやってきそうだと不安ばかりを並べて遠足

朝と違うすがすがしさを携えた午後八時の自販機前で

ラーメンを頬張ることに精を出し夜が来たのも忘れてしまった

素直さを忘れないようにしたいから線路みたとき嘘を言うね

好きだとは一度も言わずに済ませたい心を全部燃やしてしまう

青みがかり透明嫌った心だから他を入れたら黒く濁った

語り手を次々とかえ反省を促してみる恋の連なり

目覚めての日差しまぶしく今日もまた一日ありと遠いささやき

白くたつ風の行方を気に入って踊り狂った夏の霧雨

雨音を聞きながら思う憂鬱はここに全部閉じ込めてある

夕闇に遠回りして何度かの夏は過ぎ去りまためぐりくる

映画館外に出れば知らぬ間に何か抜け落ち騒ぐ日曜

移動する体とともに思い出がはしゃぎまわるは命のかぎり




戻る   Point(2)