ぼくの道/じゅらいち
 
真冬の晴天の日

林道をゆるゆる登っていった
雪はあまり積もっていなかった

四駆に乗って来た
武田先生、降りた。
背広にコートを着て

「武田先生、もうすぐですか?」

「あと二つ
 峠を越えればいいですよ
 どうぞ乗って下さい」

次第に積雪が増し
四駆は無言でずきずき進んだ
ヒーターも効かない凍てつく空気
アップダウンを繰り返し


問題の一軒家に
夕方到着した
辺りはもう暗い
茅葺きの大きな家

「小林さん、ここで
 ガードマンしてて下さい」

しばらくしたら
家の中から
念仏を称うる声が徐々に
大きくなって

武田先生が家から出て来て
招いて頂いたので入ったら
広々とした土間
囲炉裏の暖かさと
燻された天井の骨組み

近所のおばさんとか
親戚の伯父さんたちが
二十名ぐらい集まって
六字名号に向かい
合掌していた

そうだった
ぼくの道を示してくれた
胸がぎゅっと熱くなった
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