「 レクイエムに誘われて 」/椎名
 
ためいきで綴る日記のかたすみに
月明かりが影を落とす

灯りの輪の中には入れない
淋しがり屋の文字だけが
影をつたって降りてくる

ほら木の上ではアホウドリが
孤独なものだけへのレクイエムを歌うよ

窓際の鉢植えの影から
道化師が躍り出る

輪の中へおいでよと
妖しい誘いの笑みをおくる

白いままの日記を閉じて
こぼれる溜息を投げ捨てて
飛びこんでみようか
妖しの輪の中へ

アホウドリの歌うレクイエムに誘われて
道化と共に夜の中へ
戻れぬかもしれない
妖しの世界へ

ひとときの夢を求めて



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